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コロナ禍を経て、コミュニケーションや働き方の面でもオンライン化が進みました。今後、ますます激化する市場競争に勝つために、国を超えたプロジェクトの推進や合同研修、世界各地の優秀人材を獲得してリモート・ワークを定着させるなど、あらゆる面でオンライン化が進むと考えられます。こうした動きに対応するためのファーストステップとして、タイ人社員に積極的にオンライン講座に参加してもらえるようになった方がよいのでは?と思っています。 |
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ホフステードの6次元モデルからも言えることですが、タイ人は外部の講座に対して、参加者とのネットワーク構築や直接的な交流など、イベント的な楽しみを強く求めています。冒頭でもお話したように、オンライン講座を敬遠するのは、そうした要素がないと思っていたり、受講することによって業務時間が削られて、その分だけ仕事が溜まって忙しくなるなど、自分の仕事や生活にしわ寄せがくるのも嫌なのでしょう。ですから、対面かオンラインか選択できる状況ならば、参加に際しても不安を感じるオンラインより、「オンラインでは効果がないから」と言って、対面での開催を待つと思います。 |
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権力格差に敏感なタイ人が、上司の勧めであってもオンライン講座にNO!と言えるのはなぜでしょうか。 |
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講座の受講は業務ではないので、参加しなくても上司が何か言えるわけではなく、懲罰の対象ではないこと、そして、現時点で必要性を感じていない講座に参加するよりも「通常の業務を回した方が会社のため」という大義名分があるからです。短期志向の強いタイ人は「自分の将来のための知識習得よりも今の業務を終わらせて早く帰りたい」と考えます。そうしたタイ人に、オンラインであっても前向きに参加してもらいたいのであれば、業務量の配慮や、「困っていることはないか」といったケアの声掛けをしてあげること、「受講することによって、本人にとってどんなメリットがあるか、なぜ今、そのオンライン講座を受ける必要があるのか」を伝えて、納得させることが大切です。例えば、タイ人社員向け異文化理解と適応トレーニングを例にするなら、「きっとあなたのためになるよ」「受講してみたら?」といった曖昧な勧め方ではなく、「日本人の考え方が分かるようになって、一緒に働く時のストレスをこんな風に軽減することができるよ」「日本人上司との人間関係がこんな風に良くなるよ」「来年日本に行く。その次はこんなステップを考えていて、あなたにはこんな活躍を期待している」といったように、具体的に伝えると良いと思います。 |
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オンライン講座への参加に後ろ向きなもう1つの理由として、必要な備品・環境が不足していることもあるようです。 |
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タイでは、個人で利用するインターネットはパケット契約の場合も多いです。カメラ付きPC・タブレットといった機材の貸与だけでなく、受講に必要なパケット支給があるとか、オンラインであっても自宅に受講できる場所がない人も多いと思うので、会議室のようなスペース利用を許可するといった配慮もあると良いと思います。 |
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タイ人は思いやりのある行為を高く評価し、感謝して、報いたいと考える価値観を持っているので、会社からそうした配慮があると、社員のロイヤリティやエンゲージメントも高まりそうですね。 |
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当社が日系企業で働くタイ人社員向けに開催してきた色々なオンライン講座の受講後アンケートを見ても「ディスカッションやアクティビティがあり、クラスに参加しながら学んでいると感じられた」「講師から豊富な知識やアドバイスをもらうことができ、オンラインであっても実務に役立つ知識やスキルを得ることができた」という声を頂いています。実際に参加してみると「思っていた印象のものとは良い意味で違った」「思っていたよりもずっと良かった」という感触を持って頂けているように思います。 |
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実際、始めのうちは様子を見守るように静かにしていますが、しばらく時間が経ってクラスに慣れてくると、オンラインであっても「ちょっと話してもいいですか?」と言って、どんどん発言や質問をしてくれます。参加者がインタラクティブに楽しみながら受講できるように創意工夫をしてきたつもりなので、それがアンケート結果にもつながっているとしたら嬉しいです。今後も、「オンライン講座もいいね!」と言ってもらえる、日本人とタイ人が協働する時に感じるストレスの解消や、相互理解の促進と、企業の生産性向上に役立つ講義を提供していきたいです。 |
【対談を終えて】 今回はコロナ禍におけるタイ人社員の育成支援の中でも、特に「オンラインの活用」にフォーカスして河島久枝氏に「ホフステードの6次元モデル」の知識を使いながら解説いただきました。6次元モデルは価値観の違いに対峙する時に解釈の指針となる心強いフレームワークです。本コラムを通じてその有用性を皆様に感じていただけたならば嬉しく思います。 サイコム・ブレインズUBCLは、これからも、日本における約30年に渡る経験とノウハウ、国立マヒドン大学経営大学院(CMMU)の教授や一流の講師陣とのネットワークを駆使して、在タイ日系企業が抱える人材育成における課題の解決を様々な形で支援します。どうぞお気軽にご相談ください。
文:サイコム・ブレインズUBCL 乙黒真弓
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