- 小西 功二サイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター / シニアコンサルタント
コラム
2023.02.03
LXDにおける学習体験が一定期間にわたることを鑑みると、当初設定した学習目標・ゴールの達成、すなわち業務上のパフォーマンス向上に向けた、学習者の行動変容の重要性が際立ちます。しかしながら一般論として、人の行動を変えることは容易ではありません。行動変容は段階的に促す必要があります。
そのように考えると、段階的な行動変容をモニタリングし、その達成度を学習者本人にフィードバックするための「KPIの設定」が必要不可欠です。効果的なKGI設定(=学習目標・ゴールの判定基準)と、マイルストーンであるKPI設定ができれば、その集計結果をもってLXDの効果測定とすることもできそうです。では、効果的なKPI設定はどのように行えばよいでしょうか。
トレーニング効果の測定には、『カークパトリックモデル』という4つの評価基準があります。4つの評価基準とは、レベル1:反応(学習者の満足度)、レベル2:学習(学習者の習熟度)、レベル3:行動(学習者の実践度)、レベル4:結果(学習者の業績)です。この4つの評価基準のうちレベル4はKGI、すなわち最終の学習目標・ゴールとして、レベル3はKPIとして活用できそうです。
この際に注意すべきは、個々の学習資産単位でKPIを設定・モニタリングするのではなく、ラーニングジャーニー全体の効果としてKPI設定・モニタリングすることです。そもそも学習者は、自らの選好に沿って活用する学習資産を取捨選択しますし、行動変容はラーニングジャーニー全体を通じて段階的に促されていくものだからです。
KPIは3種類のラーニング・タッチポイントの違いを考慮しつつ、当初設定した学習目標・ゴールであるKGIの達成に、合理的につながりあるものを設定しましょう。例えば、ソーシャルラーニングなら学習のパートナーとなったメンターや、個人業績の管理者であるマネジャーから学習者の行動変容や業績に関する好意的なコメントを獲得することをKPIとして設定できるでしょう。フォーマルラーニングならBefore&Afterでの実技テストやアセスメントを行い、一定得点以上の獲得をKPIとして設定できるでしょう。
ちなみに、即時的学習はその性格上、学習者の利用状況に濃淡が出ます。後に利用状況を解析して、より効果的な学習コンテンツの整備に役立てる姿勢は重要ですが、利用頻度をKPIとして設定し、その数値が芳しくない学習コンテンツを学習資産リストから外すのは誤りと考えます。むしろ、実際の利用者に「お役立ち度」をヒアリングして、その結果で判断する姿勢が重要と考えます(この場合、「お役立ち度」をKPI設定することが妥当)。
以上、LXDの設計について、筆者の見解を加えながら解説いたしました。人材育成担当者の皆さまのお役に立てれば幸いです。
小西 功二Koji Konishiサイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター /
シニアコンサルタント
神戸大学文学部卒業、名古屋商科大学大学院MBA。中小企業診断士。
前職では自動車メーカーのコンサルティングファームにて、系列ディーラーの経営改⾰を⽀援。販売台数の増加、利益拡大、赤字経営からの脱却、後継者育成など幅広い支援業務に携わる。2013年、サイコム・ブレイ ンズ入社。顧客企業のパフォーマンスが向上し、「社員が元気になる」様な研修プログラムの開発・提供に力を注いでおり、人や組織がよりよく変化していく事を体感できることが最大のモチベーション。大阪府堺市出身、趣味は映画鑑賞と車の運転。年に一度は10日間の一人旅に出ている。
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