- 加藤 円サイコム・ブレインズ株式会社
シニアコンサルタント
コラム
2020.06.16
バーチャル研修は、仮想教室、講師と複数の受講者がリアルタイムでオンライン上の会議室に入室して双方向で学習を進めるスタイルの研修です。バーチャル研修の特徴を上手く活用することで、より効果的な英語研修のプログラムを企画することが可能です。
バーチャル研修は、リアルな研修と比較して参加者が集合する会場と移動の必要がないため、頻度を上げて複数回にわたる研修プログラムが組みやすいです。この点は成果が出るまでに比較的時間を要する英語研修と特に親和性の高いポイントではないでしょうか。
一方でリアルと比較して集中力を持続しにくいので、1回の時間を縮小し、その分事前学習を行う立て付けにし、バーチャル研修は身に付けた知識・スキルを実践する場として活用すると効果的かと思います。事前課題を課すことが自己学習の促進にもなりますし、グループメンバーのレベルのギャップを緩和する効果も期待できます。
矛盾するようですが、英語研修の場合はあえてバーチャル研修を事前準備無しでの対応力を上げる場として活用するのも良いでしょう。オンラインは対面以上に沈黙の時間が気まずく感じられます。英語となると相手の言っていることを理解したり、自分の言いたいことを英語にするのについつい時間をかけてしまい、相手を待たせがちです。気まずさのプレッシャーに打ち勝ち、相手を待たせずに自分の持っている知識をフル活用して瞬時に対応する力を鍛える上でも、オンラインはより効果的であると感じます。また集合研修では、ディスカッションでそんなに話をしていないのにお互い空気を読んでいつのまにか合意形成がなされていることが時々あります。この「空気を読む」スキルは、相手が外国人だと通用しないこともあります。リアルと比較してバーチャル研修では「空気を読む」といった非言語コミュニケーション力を駆使しにくいですから、この点も英語研修にはむしろ好条件な練習場になるのではないでしょうか。実際、グローバルビジネスの現場で最も頻繁に使用されるのはメールやオンライン会議ですから、バーチャル研修はリハーサルの場として最適です。
英語は自分自身では話せるようになっているのか、できるようになっているのかなかなか成果を実感しにくいという側面もあります。バーチャル研修では、録画やファイル保存などの機能を使って比較的容易に記録ができますので、復習に用いたり自分のパフォーマンスを客観的に評価、分析を行うことが出来るのも良い点です。アウトプットやトレーニング成果の可視化と併せて、フィードバックや質問の場も積極的に設けるようにすると、内省やフィードバックのスキルが向上し、学習グループ内での共通言語が作られ、協調学習の促進もはかられます。ここまできたら、受講者の自主的な学習の場として、あえて講師がいないセッションを設けても効果が期待できるでしょう。
もちろんバーチャル研修が万能というわけではありません。チームビルディングなど、その場の空気感や一体感が非常に重要な内容であれば集合研修の方がより効果的でしょうし、受講者個人の発話量や個別のニーズへの対応は、オンライン英会話がまさっています。また自己学習の支援、学習進捗の管理といった点では、映像講座やテストなどのLMSをベースとしたeラーニングが適しているでしょう。対象者や目的に合わせて、複合的にオンラインとオフラインを組み合わせることが、一番成果が上がるプログラムと言えるのではないでしょうか。
加藤 円Madoka Katoサイコム・ブレインズ株式会社
シニアコンサルタント
大学卒業後、児童英語講師、高校非常勤英語講師、留学コンサルタントを経て当社へ入社。シニアプランナーとして、英語基礎力強化、TOEIC対策研修、スピーキング力強化研修などの企画、教材開発、研修クオリティー管理、講師マネジメントに携わった。現在はシニアコンサルタントとして活躍中。オーストラリア、イギリス、アメリカの滞在経験から、英語をコミュニケーションツールとして、様々な国の人とディスカッションすることのおもしろさと難しさを実感する。自分の経験を生かして、英語学習についての悩みを共有することで、グローバルな環境で活躍する受講者の応援をしたいと考えている。
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